戊戌歳如月 その3
釜 甑口老梅地文 浄清造
釜の口造りでまっすぐ真上に高い口は甑口と呼ばれています
甑とは古墳時代に作られた蒸籠のような形をした土器のことだそうです
若い生徒さんの中には蒸籠のことを知らなかったので急遽、台所から実物を持ち出しました
なお、真上でなく、少し開いた高い口は鮟鱇口と言うそうです また、それの低い口は十王(閻魔)口と呼ぶようです
つくづく昔の茶人さんの表現力には感服です
この釜の甑には七宝つなぎの文様が施されています
七宝つなぎとは、ある円を中心にその円と同じ大きさの四つの円で均等に囲み、四つの円もそれぞれ同様に囲むと花びらのような文様が繋がるものをそう呼ぶそうです
七宝の円形は円満を表しており吉祥文とされているそうです
なお、七宝と呼ばれるようになった訳は、四方八方に繋がっており、それが仏教の七宝(金 ・銀・瑠璃(るり)・玻璃(はり)・珊瑚・瑪瑙(めのう)・硨磲(しゃこ))に結びつき、そう呼ばれるようになったそうです
そういえば、先日、受賞した羽生善治竜王と井上井山裕太名人の国民栄誉賞の記念品が両氏の七冠にちなんで七宝彩釉群鶴文硯箱でした
この七宝は伝統工芸の金属を素地にした焼物のことで、金属工芸の一種で、先程の仏教の七宝ほど美しいことからそう名付けられたそうです